
さて仙台、陸羽東線はこの列車で乗り潰してしまいます。仙台9:13発新庄行きのリゾートみのり。写真で見る地味なカラーのイメージとは大違いで、実物の塗装は艶々のキラキラ、鏡のように周りの風景を映しこんでします。

なんか魅惑の3両編成中間封じ込めキハ。

私の先頭車一番前で進行方向右側の窓際座席、3号車9番Aからの眺め。今年1月のやくも号パノラマグリーン車のように狙って取ったわけではないのですが、2日前の指定席購入で、たまたま空いていたのです。前は展望フリースペースですが、なかなかいい席です。仙台出発の時点では運転室後ろのカーテンは閉められています。
さぁ出発、緩やかにカーブした切通区間を進みます。この風景は私にとって、東北本線で上野から北上する際、後半戦がスタートするぞという仙台を象徴するものなのですが、ここの切通の緑が濃いこと濃いこと。新幹線でワープしてしまいましたが、夏の東北に来たんだなぁ~と、気分が盛り上がってきました。

座席にはこんな案内が置かれていまして、小牛田運輸区の作成した「社員お勧めの車窓スポット」。見れば仙台車両センター(電車の車両基地)にJR貨物仙台総合鉄道部(機関車の基地)、旧東北本線の遺構なんてのもあり、私のために作ってくれたんではないかと思われる内容でニンマリ。一つ注文すれば並走する仙石線、その歴史からほんの少し東北本線の山側を走る区間が見えることも記載すれば面白いでしょう。仙台車両センターには走る機会はほとんどなさそうなED75が2機、JR貨物の基地は金太郎だらけ、時代の流れを感じます。途中で中央線でも時おり見ます紫色のお座敷電車とすれ違いました。

仙石線が東北本線の山側に移動するところは見逃してしまいましたが、これが昨年5月に出来ました東北本線と仙石線の接続線。
ホームの端の方は緑が一杯の松島駅、この先トンネルは無いようで運転席後ろのカーテンが開けられます。どっと人が集まってくるのですが、最初はみんな女性(おばさんが3若い女性が1)、一通り写真を撮り終えて去った後、ポツポツと様子を伺いに来るのが一人の男性。なんか面白い。ちなみに乗車率は70%ぐらい。
列車はあまりキハ40系らしくない低いエンジン音をドロドロと轟かせ快適に進みます。大きい窓から夏の日差しが一杯に差込みちょっと暑い。カーテンを半分閉めます。
小牛田到着、赤ライン黄ラインとカラフルなキハ110系、石巻線DE10、そろそろ引退らしい719系が集う降りてみたい駅です。私も運転室後ろに立ってみます。さぁ陸羽東線、左へ左へとカーブを切って東北本線と別れ、頭上の架線がぷっつり切れ、両側田んぼの単線非電化区間へ。運転室越しに写真を何枚か撮ったのですが、それを見直してみますと、こう書かれた紙が写っていました。「お願い、乗務員室の写真撮影・動画撮影はご遠慮いただいておりますので、なにとぞご理解とご協力をお願いいたします。」ということですので、私も撮影はしてしまったのですが、今記事におきましては前面展望の写真の掲載は見送ります。

古川、ここでは11分の停車、喫煙所がありますとの案内もあってちょっと一服。
古川出発、小牛田古川間は20年ほど前に日が暮れてから乗ったことがありますので、実際はここからが乗り潰し区間になりますが、とりあえずは車窓がクライマックスを迎える前に、車内販売で購入した弁当を食べてしまいます。価格が1150円だけあってなかなか美味しい。それにしても動物性たんぱく質がそれぞれ小さな焼魚と卵焼一切れだけというのは、私のような中年のおっさんの体には優しいも、若い人には物足りないだろうなぁ。駅弁=高くて量が少ない=中高年向け、の王道を行く商品みたい。後でお品書きを見直してみたら豚肉もキャベツ炒めに入っていたみたいです。
岩出山駅で上り列車と交換。キハ110系は気動車らしからぬ白い塗装なのですが、ここを走るのは窓の上下のラインがはっきりした色なので白がますます際立ちとても鮮烈。この先では360度の田園風景が見られると車窓スポットの案内に書かれていましたが、よく分からず見逃してしまいます。鳴子御殿湯なんて仰々しい名前の駅に止まります。名前に似合わず半分高架の棒線駅でした。昔の駅名は東鳴子で1997年に改称したらしい。

だいぶ高原らしい風景になりまして、下りリゾートみのり号が23分も長時間停車します、イベント駅であります鳴子温泉に到着します。太鼓やゆるキャラのお出迎え。乗客の皆様それぞれ楽しんでいらっしゃる。


ここも上り列車と交換でして跨線橋に上がってキハ110系を撮影。

駅外に出てみます。私の写真の腕では全く伝わりませんが、プラプラ歩いてみたい由緒正しい日本の温泉街らしい景色です。駅前には足湯がありまして、ちょっと浸かってみます。ただでさえ暑く汗が吹き出しているのに、ますますおかしくなりそう。足を乾かして靴下を履くのが面倒くさい。サンダルで来ればよかった。

鳴子温泉駅の中にはこんなステージがある。こんなにお金もかけたので、古川から温泉リレー号でも何本か走らせて、もっとお客さんを呼び込みたいところ。

列車に戻ります。昭和56年の製造プレート、私としてはそんなに古いとは思わないのですが、キハ40系はJR東海では絶滅し、そろそろ撮り鉄さんらも焦り始める頃ではないでしょうか。私は絶滅前にJR北海道とJR東日本青森地区で残る非冷房のに真夏にお名残乗車しておきたい。

2号車のイベントスペース。子供向けの絵本がありますが、夏休みというのに子供の姿はこの列車で一度も見かけませんでした。

鳴子温泉を出発します。ホームでは横断幕を上げてのお見送り。私は1円もお金を使っていないのに、こんなことされるのはなんか恐縮です。

鳴子温泉を出てしばらくの、陸羽東線車窓クライマックスであります鳴子峡は、トンネルとトンネルの間の鉄橋のほんの僅かな区間。ここは一旦停止します。風景そのものは、日本のローカル線に乗っていればありふれたものですが、何と言っても撮影の有名地、ここがよくポスターやら時刻表等の表紙で見る写真(左上の橋から撮った)の場所か...という感動が大きい。

中山平温泉駅。ここはコンパクトな駅前広場があって、線路と平行の駅前通りの片側に小さな商店がいくつか並んで営業中。なんだか簡素な鉄道模型のレイアウトを再現したかのような風景です。写真には写ってませんが駅前にはSL(C58 356)が置かれていました。しかし手入れがされておらず、かなり残念な状況。

勾配をどんどん登っているようですが、低速なためかエンジン音はそんなに大きくなく、頑張って走っている感じはあまりしません。車内放送で山形県に入ったとの案内。堺田からは下り坂、また日差しが強くなって夏らしい雰囲気で一杯になります。鳴子温泉でたくさん降りたので、この区間での乗車率は30%ぐらい。隣の席も空きました。
最上なんていう駅がある。ここで降りる客も10名ほどいます。東北を代表する川、最上川の最上。そんな駅あったっけ?、それに最上川はこの辺を流れてはいないはず。駅前にはローカルな名前のスーパーマーケットが店を構え、小さいながらもそれなりに歴史がある街が広がるのが見えます。気になって帰って調べてみるのですが、ここも昔は羽前向町という駅で1999年に改称されたもの。最上というのは、ここに役場が置かれる最上町から取ったもので、最上町には最上川は流れていない。
そろそろ終点の新庄、席を立ち、最後の区間は展望フリースペースでかぶりつき。奥羽本線(山形新幹線)と並走し、標準軌と狭軌が並ぶ、面白い線路好きにはたまらない区間を見届けようと思います。
写真で説明できず残念ですが、まずは右へ右へとカーブして、左手の奥羽本線と並びます。まだ双方の線路は、一般的な複線区間のように引っ付きません。間には幅1m程の雑草スペース。そして南新庄を通過、この駅は陸羽西線側だけにある棒線駅。その後しばらくして、引っ付いた、引っ付いた。一見複線区間、でも左は電化された標準軌の線路、こっちは非電化の狭軌の線路、面白いのだ。新幹線車両と並走したりすれ違うのを期待しましたがそれは起こらず。ちなみに左の奥羽本線は私の乗り潰し地図はすべて赤く塗りつぶされていますが、山形新庄間においては標準軌になってから乗ったことがありません。要、乗り直し区間になります。
新庄到着間際は、右手にも標準軌の留置線が広がり、多数の標準軌線路の中の、たった1本の狭軌の線路を進みます。新庄側から陸羽東線に乗車してかぶりつきをしたら、奥の細道に入って行くみたいな感じかもしれません。

12:26終点新庄に到着、仙台から3時間以上も乗ったとは思えない程の充実したものでして、これもリゾート列車の効果かと思います。

駅では新庄の人たちの盛大なお出迎えを受けます。改札の横では太鼓の実演がされ、ゆるキャラもたくさんいる。改札方面へと歩いているうちに袋に入った観光パンフレット、うちわ、小さな袋に入ったクッキーを次々に渡されるかたちで頂いてしまいます。今回は新庄で降りる予定はないので申し訳ないですが駅構内へ逆戻り。ちなみにこの駅には1983年の夏に降りた事があり、その時は今の反対側に渋い木造駅舎があった気がするのですが、私の記憶違いでしょうか。

新幹線ホームにはこんな車両が止まってました。足湯新幹線とれいゆつばさ。キワモノというか、やりすぎ改造車のイメージでしたが、現物はとても格好いい。そして覗いてみた車内も、ゆったりしたボックスシートがヨーロッパの1等車みたいな雰囲気で素敵。乗ってみたい列車に認識を修正いたします。ホーム号車案内には「足湯」と出るのも面白いです。

その後到着のつばさ号は、旧塗装のE3系で来ました。再び太鼓が打ち鳴らされ、ゆるキャラ、パンフレット配布係が並んで笑顔でお客様をお出迎え。反対ホームからだと絵巻に書かれるような光景が展開されます。その後の山形方面からの普通列車の到着では当たり前ですが歓迎は一切無し、普通列車ばっかり乗車していては、こういうイベントには立ち会えないのであります。
(乗車は2016年7月)
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