一部区間がダム湖に沈む吾妻線乗車記

今回の群馬日帰り鉄道旅行の一番の目的はここ吾妻線。半月後に八ッ場ダム建設に伴い、岩島~長野原草津口駅間の線路切替が予定され、現在の線路はいずれダム湖によって水没するというので気になって行って来ました。この区間は1988~90年頃、草津温泉にスキーに行くのに乗車したことがあるのですが、複数のスキー仲間と一緒だった事で全然覚えていません。また、長野原草津口から先は初乗車になります。

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両毛線を降りて新前橋から乗るのは特急草津1号。短距離なので自由席特急券料金が勿体ないですが、青春18きっぷでの旅行との差をつけるためにも敢えて乗ってみたくもなるものです。平日なので空いているだろう思っていたものの、予想以上に乗車率は高く、窓際の席は2,3か所しか空いていませんでした。しかしこういった列車によくいそうな、喋りまくるオバサン団体はおらず車内は至って静かで快適。乗車しますこの651系、常磐線での任務を解かれ、半年前から特急「あかぎ」「草津」で第2の人生(車生)を送ることになりました。私としてはまだまだ新しい車両のつもりだったのですが、座ってみて前の座席の下に足を延ばすことが出来ないのを知って、あぁ、やっぱり古い世代の車両なんだなと実感します。

渋川で同じ特急草津と交換し、上越線と別れ単線の吾妻線へと入って行きます。線路のジョイント音のリズムもどことなく変わった気がし、縦揺れ、衝撃も大きくなり、ローカル線らしい走りっぷりになります。金島駅を出てすぐ上越新幹線を潜り(どうしてここに駅を造らなかったのだろう)、しばらく走って四万温泉や沢渡温泉への玄関口である中之条に到着。ここでは下車客が多く、川側になる進行方向左側の座席に移動します。そして渋川を出て約50分、岩島駅を通過します。さぁここからが八ッ場ダム建設によって廃線となる部分、しっかりこの風景を心に刻み込んでおきたい。

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まずは駅を出たところで新線が左側へと分岐、立派なコンクリート橋です。次第に谷が狭まってくる、そろそろかな、子供の頃に見た鉄道大百科的な本には必ず紹介されていた全長7.2mで日本一短いトンネル「樽沢トンネル」。車窓左手の沿線には廃線となる個所を走る電車を撮影するカメラマンがちらほら見かけられるようになります。私も窓にカメラを向けて待つ。トンネル入った!これか?いや長い…違う。出たと思ったら一瞬、黒い門というか影のようなものがさっと電車の上を通り過ぎる、あーっ!これだ、写真は撮り損ねてしまいました。この日本一短いトンネルを出たところ左手下の道路歩道には5,6人のカメラマン、何故かみなさん地面に這いつくばって写真を撮っています。立って撮るより這いつくばって撮った方がいい写真になるポイントのようで、ご苦労様ですと声を掛けたくなってきます。

このトンネルは水没はしないようですが、この先のどこにダムサイトが出来て、どこまでが水没しないのか、どこから水没するのかを知りたくて注意して車窓を見ていたのですが、分からないままいずれ水没するという川原湯温泉駅に到着。ここで下車します。(ダムサイトは旧川原湯温泉駅の700~800m渋川側のようです。)

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まず目に飛び込んでくるのが頭上の大きな橋。

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橋脚の上の方には何か書いてあり、拡大してみると「標高586m」「標高583m」、たぶん586mがダムの高さで、583mが満水時の水位だろう。めちゃくちゃ高い。そして私の今立つところはダムが出来た後は、めちゃくちゃ深い。すごい事なんだなぁ…とホームで立ちすくしていると、駅員さんに、早く切符見せてくださいと催促されてしまう。ついつい夢中になってしまった、申し訳ない。切符確認の後は自由に見学してくださいとの事でした。駅舎の中は見学に来た観光客が10人ぐらい。車で来る人も多い。

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外に出てみますが周りは何もありません。駅の隣には川原湯温泉活性化施設という建物があるも既に閉鎖され、道路はダンプカーが頻繁に走る。既に人々の生活している雰囲気が全く無いので悲壮感みたいのは私にはほとんど感じられませんでした。

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消えゆく運命の駅の光景。

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この駅では30分の滞在で、大前行きの普通電車に乗車します。車内は大混雑、その80~90%が水没区間のお名残乗車の鉄道ファン。平日でこれだから、休日はもっとすごいんだろう。座る席もないのでドアの前で立って車窓を見ます。ここから次の長野原草津口までの間で、川原湯温泉駅上に建てられた橋の高さより上まで登るわけですので、相当な勾配区間のはず、モーターの音が聞けるモハに乗ればよかったのですがクハに乗ってしまった。しかし混んでて移動も出来ず。

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出発しますと上空にまた橋、これも高い。いずれはこの角度で見られなくなる。

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クハに乗ってしまったので実感できませんでしたが、これから完成するダム湖の水面上まで登り切ったようで、左手から新線が合流して長野原草津口に到着。乗客のほとんどの鉄道ファンもここでは降りない。みんな終点大前まで行って戻ってくるのだろう。

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さぁここからが私の未乗車区間。まずは左に廃線となった太子駅方面への鉄橋を見る。羽根尾駅では先ほど私の乗車した651系が隣のホームに止まっています。万座鹿沢口駅が単線で待機できないのでここまで回送されるようです。ここからは川が車窓左側から右側になり、万座・鹿沢口駅に到着。ここは特急の終着駅なのに高架で1面1線の面白い駅、降りる客もほどんどなし、さぁ最後の1日5往復しか普通電車の走らない、乗りつぶしをする者にとって重要な1区間、今となっては正直どんな車窓だったか忘れてしまったのですが、電車は4分走って終点大前に到着。

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まずは改札(といっても無人駅ですが)を出てみる。最後尾に乗車していたので1番に改札を出られるのですが、誰も来ない。この日のこの電車、これだけ満員でしたが、100%乗るだけが目的の乗客だったようです。

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対岸へ渡る橋と、そこから上流側の眺め。wikiの大前駅解説によると1日の平均乗降客は2011年で50名、朝2本と夕方からの2本で、この橋を渡る人が見られるのだろう。

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橋あたりから駅ホームを見る。こちらは人一杯だ。

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駅の渋川側の踏切より撮影。

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これが線路の末端部。今となっては吾妻線は万座・鹿沢口が終点でも良かったのではと思うわけですが、当時は当時の考えがあったんだろう。

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さて戻ります。進行方向と反対向きですが、進行方向右側ボックスシートの窓際に座ります。

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長野原草津口では9分の停車時間があったので、降りて渋川側先端まで行ってみる。線路切替の準備は万端のようです。

もう一度、ダム湖に水没する区間を走ります。今度はだんだん実感が湧いてきた。建設する、建設しないで揉めてきたダム、どちらが正しいかは私は判断できません。しかしこれは凄いことなんだなと。何千年も続いた渓谷の風景も終わる、何千本いや何万本もの木々も生命を終える。この場所で生活していた人たちはどのような気持ちでここを去ったのだろう。そしてこれはここだけでなく日本が近代化してから至る場所で繰り返されてきたんだと。青梅線の先の奥多摩ダムだってそうだったんだ。

水没区間を過ぎ、今度は小野上温泉駅で下車、今日はタオルを持ってきてまして、駅近くにある温泉に寄り道します。最近出来た健康ランドみたいな所で、いいお湯でしたが、これなら私の家近くの東京の昭島温泉とあまり変わらない。せっかく旅行に出たのだから、もっと質素で風情のあるところがいいなと、だんだん温泉に対する私の理想は高くなってしまっています。

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時間が無いのでそこそこ温まったところで出て、後続の電車で高崎に向かいます。来たのはまた115系の湘南色。

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次の小野上駅では行き違いで少々停車。いい駅で止まってくれました。駅裏に線路のバラストの採掘所があり、ホキ800が並んでいる。この車両だけは昔から全く変わらない。高速で走るわけではないので、新しくする必要が無いのでしょうか。その中の1両(ホキ1459)の製造プレートを見たら昭和39年とありました。ここですれ違ったのは107系、この電車にはタイミングが合わず、なかなか乗れません。

(乗車は2014年9月)

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おじさま鉄道ファンの日本の鉄道乗車記録。ふと日本の鉄道全線に乗ってみたいと思うようになりました。未乗区間は4,000km以上もあり、今の生活パターンではおそらく不可能な領域なのですが、路線や車両に愛情を込めながら、少しずつ記録に残しておこうと思います。古い記事順にご覧になりたい方は下の「月別アーカイブ」からどうぞ。
(2013年2月より海外編も始めました。)

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