南阿蘇鉄道乗車記

今回の旅行の最後を締めくくるのは南阿蘇鉄道。阿蘇と言えば神話の国、昨年秋にも同じく神話の国の出雲地方も回りましたが、鉄道に乗っているだけでは、駅や列車のラッピング等いろいろイメージ作りに頑張っているんだなぁ~ぐらいしか感じませんでした。しかし今回は上陸した台風が弱まって低気圧に変わった後という独特な風景の中、ちょっとしたハプニングみたいなのも度々起こり、正に神話の国に行ってきたなという感じでした。

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新水前寺から立野までは大牟田・熊本間でも乗車した815系というロングシートの電車と200系という赤いディーゼルカーを肥後大津で乗り継いで向います。どちらの列車も学校帰りの小中高校生で一杯だったので一番前でかぶりつきをして過ごします。立野までは1990年代後半にSLを撮影しに来た事があるのですが、どこで撮影したのか記憶を辿れないまま木々が深くなりスイッチバックの立野駅に到着します。

列車を降りてそのままホーム進行方向を歩いて行くと南阿蘇鉄道乗り場なのですが、あれっ?無い!ピッとやる改札機が無いではないですか。新水前寺ではsuicaで乗ってしまったのです。右手に財布を掲げてウロウロしていると、駅員さんらしき人が通りかかったので聞いてみますが忙しいみたいで、ICカードが使えるのは肥後大津までだよと答えただけで行ってしまいます。

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困りましたが発車時間も迫ってますので、清算しないまま17:14発の南阿蘇鉄道高森行き乗車します。この列車も学校帰りの中高校生で一杯なのですが、ロングシートの一番前が空いていましたのでそこに座ります。昨年秋にさんざん乗ったキハ120と同じタイプみたいですが、前面は貫通路が無く1枚窓ですので見晴らしはとても良いです。さっきの駅員さんらしき人は南阿蘇鉄道の運転手さんでした。

さて出発、軽快に加速して行きます。それにしてもなんて山深い中を走るのか、一般的に山間部を行くローカル盲腸線は、起点が開けていて先へ進むにつれて山深くなっていくパターンが多いですが、いきなり森の中に結構なスピードで突っ込んで行くではないですか。

そして有名な第一白川橋梁にさしかかります。「この鉄橋は**年に製造されて水面からの高さは**m・・・」そんな案内がテープ音声で流れるのですが列車は全く減速する事無く一気に通過。最後に「それではこの景観をごゆっくりお楽しみください」と締めくくる時にはとっくに橋は渡り切っており、列車は長いトンネルの中を轟音をたてて走っているのでした。

何なんだ?この雰囲気は、何処かとんでもないところに連れて行かれるのではないか。全くこの土地や路線の知識無しで乗車したら恐怖を感じるレベル。村上春樹さんの小説に出てくる猫の国行きの列車があるとしたらこんな感じなのではないか。

トンネルを抜け、明るくなった車内を見渡すと、さっきまで中高生だと思っていた乗客は全員タヌキで、全く理解できない言葉を盛んに喋っていた。そして前方を見るとカワウソが運転席に座りマスコンを握っているのであった・・・
映画ならこんな光景が展開されるのではないかと想像してしまいますが、もちろんそんなことは起きず、トンネルを抜けると徐々に周りの視界は開けてきて、外輪山に雲が低くたちこめるというとても幻想的な里山の風景の中を走ります。

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約30分の乗車で終点高森に到着。途中駅ではぽつりぽつりと下車客がいたものの、ほとんどの乗客が終点高森まで乗り通す感じでした。

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昔はC12が走りまわっていたんだろう構内。

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木造駅舎の中も中高生で一杯、雨の日の混雑した山小屋にでも入った感じです。外に出ても雨、この辺で夕食をと考えていましたが予定変更。8分後の列車で折り返す事にします。

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倉庫?の影にはこんな車両。これは三陸鉄道にいなかったっけ?移籍してきたの??後で調べてみたら同型の車両のようで1998年からここで走っていたんだそうです。

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乗車するのは来た時と同じMT2003Aで1986年製。ほぼ同時期デビューの松浦鉄道のは今ミャンマーで走っているとは何とも凄い時代になったものです。

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帰りはガラガラでまた一番前の席で前方風景を楽しみます。ここは「見晴らし台」という駅、おそらく晴れていたら素晴らしい景色が見られるのでしょう。

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ここは唯一の交換駅の中松駅。

次は「南阿蘇水の生まれる里白水高原」駅という日本一長い駅名、こういう長い駅名は、俗に言う子供につけるキラキラネームみたいに、後になって案内が大変で事業者は後悔しているのではないかと思ったりしなくもない。この駅名を略したような「南阿蘇白川水源」駅というのも別にあってちょっと紛らわしい。

そして次はまたまた長い「阿蘇下田城ふれあい温泉」、駅に温泉があるのか?、駅舎を注意して見ると「ここに温泉あります」みたいな張り紙がしてあったので急遽ここで下車してみる事にします。

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ホームに降り立ってみると神話の国に相応しい素晴らしい景観の駅、線路際には紫陽花も咲いています。

駅の温泉は地元の人で賑わっており、話題はやはり台風が低気圧になって良かったなぁという事。こういった山間部では都市に住んでいる以上に台風は深刻で恐ろしいものなんだと実感させられます。

いいお湯でしたが立野から折り返してくる列車も見たいので早めに上ります。そして湯上りにはビール!冷たいのをグイーッと飲みたい。しかし駅舎内には牛乳や清涼飲料はあるもののビールが見当たりません。恐る恐る番台に並んで座る夫婦っぽい店員さんに聞いてみますと、ちょっとした沈黙の後で静かに首を振り「ビールはありません」との答え。何だか聞いてはいけない事を聞いてしまったような雰囲気でした。その土地にはその土地のルールがあるのでしょう。仕方ありません。

店内のお土産品を見回していると後ろから細々とした枯れた声が聞こえます。「旅の方よ…、タヌキ酒…、飲んでみっかね…?、村の娘タヌキが丁寧に仕込んだ酒じゃけん、よう効くでぇ~」振り返ると老タヌキが店の奥から大きな黒い瓶を引っぱり出しているのであった・・・なんてストーリーをちょっと思い浮かべてみた。

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駅を出て観光マップを見て小学校で習った地理を少し思いだしました。ここは広大なカルデラ地形の中、起点の立野があんなに山深かったのはカルデラの入り口だったからです。熊本空港に置いてあった観光客向けのフリーペーパーによるとここは元々はカルデラ湖で神様が転んで隙間が出来た場所が立野で、尻もちをついて神様が「おらー立てん」と言ったのがそのまま訛って地名になったんだそうだ。面白いではないですか。

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立野からの列車が来ました。ホームには孫をおんぶしたおばあさんが列車を見に来ていて、鉄道写真家にとっては喉から手が出そうなほどの美味しい光景が展開されていたのですが私は上手に撮れず。私も小さい時は母におんぶされて電車を良く見に来ていたそうで、「こんな頃から電車ばっかり見せているとおじさん(←私の事)みたいになっちゃいますよ」と心の中で語ってみる。

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帰りの列車がやって来ました。

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乗客はゼロ。立野から乗る学生さんたちを迎えに行く列車のようです。

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立野の手前の森のトンネルを猛スピードで走ります。ここで神話の国とはお別れ、現実世界に戻るといったところでしょうか。

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最後に乗車するのはキハ47、と思いきやエンジンを交換したキハ147。下車した肥後大津でsuicaを清算。新水前寺~立野、立野~肥後大津分を引いてもらいます。これを忘れると東京に帰ってから「お客さん、新水前寺からですので1万****円の不足ですね…」と大変な事になってしまいます。

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肥後大津から空港ライナーという運賃無料の快適なジャンボタクシーで熊本空港へ。お腹すきました。搭乗券を受け取ってレストラン街へ直行です。しかし最終便出発前のお腹を空かせた乗客が沢山いそうなのにもかかわらず、もうどこもラストオーダー締め切り時間ではありませんか。こうなったら搭乗口前のチンする焼きそばかたこ焼きしかないか、しかしここも食べ物は全部売り切れ、仕方なくスニッカーズを齧りながら(←やってみて激しく後悔)生ビールを飲む事にします。

今日は食に事に関しては運がありません。何なんだ一体。あまりの空腹に紙コップにビールを注ぐ小柄な女性を見て、そのうちタヌキに化けるんじゃないかと妄想までしてしまいます。

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この飛行機で羽田へ、
すでに台風→低気圧となった雲は無く、上空から見えた熊本の夜景は息をのむほどに美しく、今回の旅行は函館の銭湯、貝塚線の古い電車、三井化学専用線、阿蘇下田温泉のビール、熊本空港での食いはぐれ、そして台風、思い通りにならなかった事が多くありましたが、なんだかんだ楽しかったなと余韻に浸れたのでした。

今回の記事の原稿はアルコールを入れながら書きましたのでちょっと暴走してしまいまして、多くの人をタヌキにしてしまいましたがまずかったかなぁ?悪気はありません。

(乗車は2013年6月)

前の記事:熊本市電乗車記2(通町筋駅~健軍町) 
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おじさま鉄道ファンの日本の鉄道乗車記録。ふと日本の鉄道全線に乗ってみたいと思うようになりました。未乗区間は4,000km以上もあり、今の生活パターンではおそらく不可能な領域なのですが、路線や車両に愛情を込めながら、少しずつ記録に残しておこうと思います。古い記事順にご覧になりたい方は下の「月別アーカイブ」からどうぞ。
(2013年2月より海外編も始めました。)

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