三井化学専用鉄道訪問記

今回の無料航空券を利用して北海道に寄り道しての九州旅行の最大の目的である三井化学専用線。長くなりますが私のこの鉄道に関わる思い出を書かせてもらいますと…

ここ(その頃は三井三池専用鉄道)の存在を知ったのは旧型国電に興味を持っていた中学生の頃でして、国鉄モハ63系が客車として従業員輸送列車で走っている炭鉱鉄道がある、そして牽引するのは明治大正生まれの可愛い2軸の凸型電機、時刻表には掲載されていない鉄道という事もあり、おとぎの国のような世界が日本にもまだ存在するんだなと、いつの日か訪問する事を夢見てました。

そして1983年の高校2年になる前の春休み、青春18きっぷを持って大牟田を目指します。この頃私は駅寝(貧乏旅行でホテル等には泊まらず、駅の構内や待合室で一夜を過ごす事)をやっており、東北・信州・四国でそれなりに実績を積んできたつもりでしたが(今となってはいろいろと心を暖められる思い出があります)、北九州はちょっと事情が違ってました。

まずは初の九州入りを果たし門司駅で次々にやってきて機関車を交換するブルトレを撮影、この駅で過ごそうとしていたのですが構内に適当な居場所が無く外も激しい雨でして小倉駅に移動、小倉駅には待合室があったのですが雨しのぎの酸っぱい匂いのおじさんたちで一杯、仕方なくそこで一緒に過ごすしかありません。しかし、さらに今度は未明になってシンナーの匂いプンプンのお兄さん達が入って来ました。絡まれてたかられそうになるも、絶対に怯えるそぶりは見せないようにと必死で耐えて、何とかその場を逃げ出し雨降る未明の街へ。ARBのトラブルド・キッズという歌の歌詞そのまんまの体験で、始発列車がどれだけ待ち遠しかった事か、そしてその時の始発は門司下関方面だったようで、大牟田へは向かわず関門トンネルを本州へ逆戻りしてしまったのです。

そんな経験もあり、その後の鉄道旅行の行き先は、九州を選ぶ事はほとんど無く北海道ばかり、社会人になった1990年代前半、何度かブルトレ乗車目的で九州に足を運びましたが、この頃は大牟田の元炭鉱鉄道の存在なんてすっかり忘れてしまっていました。

しかしあれから30年の歳月が流れて2013年、この鉄道、名前は変えるもまだほんの一部区間が存在しておりまして、嬉しい事に可愛い凸型電機も健在なのです。

***

大牟田の旅館を朝7時に清算を済ませ出発。テレビはどこをつけても台風接近の注意を促すものばかりだったのですが、外はまだどんよりと曇っていながらも雨も風もなく、正に嵐の前の静けさといった雰囲気です。予定ではレンタサイクルを借りるつもりでいましたが、台風が来たら自転車では大変な事になるので徒歩で向かう事にします。まずは牛丼屋さんで朝食。

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線路際を博多方へ歩いて専用線へと向かいます。ちょうど大牟田駅から415系の門司港行きが出発、JR九州にもどんどん新しい電車が登場してますが、まだ国鉄型が走っていたんですね。

ここで駅構内にDE10の姿が見えない事から嫌な予感がします。

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JRと西鉄線をオーバークロスする三池浜へと通じていた廃線跡。この構造物はパイプラインの土台になっていますので一応まだ現役といっていいかもしれません。

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こんな所で九州横断特急の通過。昨年7月の豪雨により豊肥本線が寸断されていた時期でしたので、それに伴う回送かもしれません。

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そして専用線の旭町1号踏切に到着。しかし…悪い予感は的中でして、

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線路は完全に錆ついています。運休期間中に来てしまったのでした。この時期運休になる事はうすうす知っていたのですが、休む日は選べませんでしたので仕方ありません。

おそらく来ることは無いと解っていつつも、ひょっとしたら今日から運転とかで踏切操作の作業員の方が登場しないか期待しつつ、踏切小屋でも観察してしばらく待つ事にします。

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こういった風景もなかなか見られなくなってしまいましたのではないでしょうか。鉄道模型のレイアウトを作る方にとっても非常に参考になるというか、忠実に再現してみたくなる情景かと思います。味わい深い踏切小屋自体も然る事ならば、小さなプラットフォームみたいなコンクリート製の列車見張り台?なんかも素晴らしいではないですか。

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中もちょっと覗かせてもらいますと、線路に向かった机のようなのが操作台でして、この下にモーターが入っているのでしょう。相当古いのではないかと思われます。

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操作台の下からワイヤーが張られ、こんな感じで線路の下を潜って滑車で向きを替え

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ここでまた滑車で上に向きを替え

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このワイヤー(竿では無い)が上下して車を遮断するのです。踏切をこんなにじっくり見たのは初めて、なかなか面白い。

貨物が通過するといわれる時刻を過ぎても全く動きは無し。諦めて宮浦操車場に行ってみる事にします。ちなみにこの踏切のそばに専用線を跨ぐ歩道橋もあるのですが、柵はフェンスでなく壁、しかも非常に高く作られており線路が全く見えない(写真も撮れない)状態でして、一企業の専用線なんだなという事を実感させられます。迷惑は絶対にかけないようにしなくてはなりません。

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5分か10分程歩いて高いフェンスに囲まれた宮浦操車場の北側の踏切に到着しました。踏切部分の線路もゲートが閉じられ本日の運行は無い事をここでまた悟るのですが、奥にはエンジ色の電気機関車が停まっているではないですか。

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それにしても何と表現したらいいんだろう、この光景に出合えた時の感動は。列車に乗って車窓を眺めているだけでは決して見る事が出来ない光景でして、大げさかもしれませんが登山者が何時間も山を歩き続けて見る事が出来る絶景と同じようなもの。こういうのも専用鉄道の一つの魅力なんだろうなぁ。

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操車場を時計と反対周りに一回りしてみます。こんな台車や木造の無がい車なんかも見る事が出来ます。

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道は操車場から一旦離れてしまうのですが、坂を上がって行くと宮浦石炭記念公園というのがありまして、かつてここの地中で活躍した車両が保存されています。

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ここからは操車場を見下ろす事が出来ます。かつての大牟田を知らない部外者の私は、見晴らしのいい丘の上に車両を持ってきて公園を作ったんだなぐらいしか思っていなかったのですが、ここが操車場より高い位置にあるのには理由がありまして、

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人車の置かれている先には坑道口があるのです。ここに石炭が地中から運び出され、ベルトコンベアー等で操車場の貨車に積み替えられた事が伺えます。積替え施設はどんな風だったんだろう。

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ちょっと進むと木陰からこんな光景も見れます。

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坂を下り、また操車場に添って戻ると南側の踏切にたどり着きます。そばには部品取りとなった機関車が3機。

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今回の旅行は一眼レフは置いてきてコンデジを持って来まして、かぶりつき写真では遠景でなく水滴の付いた窓ガラスにピントが合ってしまい使えないなぁと思っていたのですが、ここではレンズの小ささで威力を発揮。フェンスの隙間から綺麗に写真を撮る事が出来ました。

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いかつい顔?とぼけた顔?どっちにも当てはまるED級の機関車(45t電車というらしい)。どんな経歴を持っているんだろう。

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こちらは誰からも愛される顔のEB級の機関車2機(20t or 22t電車というらしい)。真ん中のは車番が「2」これはシーメンス製のオリジナルか、確か実家の押し入れの中に三井三池の特集で機関車1両1両の解説がある古い鉄道ファン誌が眠っているはず。捨てられていない事を願いたい。

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操車場側を振り返ると花が見事に咲いています。これは雑草の花?

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線路の南側の工場側はこんな地形でして、炭鉱の跡である事が伺えます。当時はどんなふうに線路が張り巡らされていたのでしょうか。

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操車場東側へ、この詰所も鉄道模型のレイアウトを作る人にとっては堪らない魅力のはず。

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詰所の前には11号機。ずっと会いたかったんですよ、君たちに。正面から顔を見る事は出来ませんでしたが、こうして今も現役で美しく整備されて残っている奇跡に感謝。動き出したらどんな音を奏でるのでしょうか。

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手前はバッテリーカーで「デ-4 自重17.5t」とあります。もう少ししますとJR東日本の烏山線に蓄電池駆動の新型車が登場しますが、似たようなものは何十年も前からここに存在しているのです。

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曇り空の下、形式写真を撮るのに最高の位置に停車していてくれました19号機。こちらも美しい姿に惚れ惚れします。「TOSHIBA・S12-2」とあるのですが昭和12年製でしょうか。

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コキ200とコキ106、こちらは平成生まれ。

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ハト152という無がい車、これは古いんだろうなぁ。

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お茶目な保線用車両、こんな車両まで保有しているとは専用鉄道も奥が深いです。

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架線を吊る梁はワイヤー?で吊っています。こういうタイプもあまり見ませんので、やはり専用鉄道ならではの光景か。

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線路の反対にはこんなもの。この放射状のはパイプの上を歩いて渡れないようにする柵みたいなものでして、子供の頃に見た思い出があります。

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操車場を一周して北側踏切まで戻って来ました。私のそばに乗用車が停まり窓が開いて中から従業員の方と思われる年輩の方が「ごめんなぁ、今日は電車は走らへんで、来週からかなぁ~」、いえいえ謝られる事なんて何もないのですよ、「しょうがないですよね、ハイ…」とペコペコする私。昨日の旅館といいラーメン屋さんといい大牟田の人は皆さんとても人当たりが良くて親切です。

いつまでもここに残っても邪魔なだけ、名残惜しいですが帰る事にします。幹線道路に出たあたりで風が強くなり大粒の雨が降って来ました。そういえば台風が接近中だったのをすっかり忘れていました。急いで大牟田駅に戻ります。そして今度の休み(10月頃取れるかな?)の旅行の目的地は再度大牟田に決定です。

今回の訪問にあたっての情報収集には様々なブログ、特に「眠れないマクラギを数えて」様を参考にさせて頂きました。お礼を申し上げます。

(訪問は2013年6月)

前の記事:西鉄太宰府線乗車記(天神大牟田線も) 
次の記事:熊本市電乗車記1(田崎橋~通町筋駅~上熊本駅前)

追記:
以下は5ヶ月後に再訪問し、機関車が動くシーンも無事に見る事が出来た記事です。
三井化学専用鉄道を再訪問1
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ありがとうございました

UTXC様
こんにちは、こちらこそはじめまして、コメントありがとうございます。返信遅くなってしまい申し訳ありません。

この度はUTXC様のブログを大変参考にさせて頂きました、と言うよりも三井化学専用鉄道への愛情・思い入れたっぷりの内容に刺激され、是非訪問してみたいと前々から思っていたのです。(本当に好きなんだなぁ~という気持ちが伝わってきて読んでいてとても気持ちがいいブログですね。三重奏おめでとうございます。)

今回は運休期間中に行ってしまうという残念な結果に終わってしまいましたが、宮浦操車場の独特の雰囲気を味わう事が出来、それなりに楽しんで来れました。また訪問する楽しみも出来た事ですし…

ウヤかどうかチェックする方法、そんな方法もあるのですね。とても勉強になります。そして大変ありがたいお話、誠にありがとうございます。本当に遠いところに住んでおりまして、秋に再訪が果たせるかどうかまだわからないのですが、メールさせて頂きます。よろしくお願いします。

暑い日が続くようですのでお体に気をつけてお過ごし下さい。

また来て下さい

こんばんは
初めまして、眠れないマクラギを数えてのUTXCです。今回は旅の予習に弊ブログを参考にして頂きましてありがとうございました。

年次ウヤの真っ只中にいらっしゃったのですね。それは残念としか言いようがありません。現在は毎日ウヤ知らずで運用が続いています。次回からは「ななろくぱーいち」という九州釜掲示板で大牟田専貨1151レが下ってきていることをご確認下さい。走っていれば三井化学専用鉄道はまずウヤじゃありません。

実際動いているところをご覧になれば大満足間違い無いでしょう。今秋のチャンスに大いに期待したいですね。期待は裏切らない特殊な専用鉄道です。土日ならお目にかかれるかもしれません。またご連絡下されば都合が付けば御指南できると思います。

遠方までお疲れ様でした。
プロフィール

QJ7000

Author:QJ7000
おじさま鉄道ファンの日本の鉄道乗車記録。ふと日本の鉄道全線に乗ってみたいと思うようになりました。未乗区間は4,000km以上もあり、今の生活パターンではおそらく不可能な領域なのですが、路線や車両に愛情を込めながら、少しずつ記録に残しておこうと思います。古い記事順にご覧になりたい方は下の「月別アーカイブ」からどうぞ。
(2013年2月より海外編も始めました。)

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